広島大学で何が学べるか2026
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教育の特色キャンパスライフ学部・大学院教員・入試・オープンキャンパス・説明会・アクセス広島大学について 0 8託しました。本学ではUNITARと協力して、国連機関に日本人職員を派遣するという事業を担うのですが、この取り組みに対して、期待されることはありますか。中満 この事業を立ち上げる際には、私もアドバイスや協力をさせていただきました。若い人材が現場に入って多くの経験を積む研修ということで、大いに期待しています。ただ平和構築の分野も、以前とは状況がかなり変わってきていますので、現状に即したアップデートをしながら研修を展開してほしいと願っています。開発分野の人材の重要性も増していますね。私は、PKO(国連平和維持活動)の最盛期と言われた時代に、PKOに携わっていたのですが、今、PKOは大きく減少傾向にあります。PKOよりもむしろ、開発の手法を取り入れながら、平和構築の根本的なニーズの部分、根本原因の解決に貢献できる人材が求められているのです。日本はJICA(国際協力機構)などで、現場主義的な多くの知見を持っているので、そうした強みを活かして人材を育てていただければと思います。越智 広島大学では国連が提唱する持続可能な開発目標、いわゆるSDGsに注力していて、Times Higher Educationによる「THEインパクトランキング 2024」において国内の大学では3年連続3位、世界の1963大学の中では101〜200位という評価を得ています。目標別でも、11番目の「住み続けられるまちづくりを」など、3つの項目で国内1位を獲得しています。気候変動への対策として、本学では2030年までにキャンパスのカーボンニュートラルを実現しようということで、キャンパス各所にソーラーパネルを設置して、学内の使用電力を太陽光発電で賄う取り組みを行っています。現在では全体の20%程度を賄うところまで進んでいます。さて、将来、国連で働きたい、あるいは国際的なキャリアを積みたいという学生に、これまでのご経験からアドバイスをいただけますか。中満 私が国連で働きたいと思い始めたのは高校生の頃でしたが、本当の意味での目標になったきっかけは、大学時代のアメリカ留学でした。自分が国連職員になることを、それまでは、何かちょっと夢みたいなふうに思っていたんですね。でも、自分には無理だと思ってトライしなかったら後悔する、一生懸命頑張って、結果、うまくいかなかったとしても、トライしなかった後悔の方が大きいだろうと考えたのです。だから学生の皆さんにはチャレンジ精神を持って、いろいろなことにトライしてほしいと思っています。「国連に入るためには、何を勉強すればいいですか」とよく聞かれるのですが、実は発想が逆なんですね。国連にはさまざまな分野の仕事がありますので、自分が何をやりたいのかをまず考えてください。軍縮でもいいですし、開発や人権、何でもよいのですが、自分が情熱を持てるテーマ、一生を懸けるに値するテーマだと思えるものを見つけることが最も重要です。そうすると、国連の どの分野に行きたいのかということが自ずと見えてくると思いますし、国連以外の道がよいという結論に至るかもしれません。「これをやりたい」という自分のテーマを探すことが、国連に直結するルートになるのではないでしょうか。越智 10年前に私が本学の学長を拝命した時に「平和を希求し、チャレンジする国際的教養人の育成」をスローガンに掲げました。しかし最近は内向き志向が強いといいますか、国際社会でチャレンジしようという人が少なくなっているように感じます。中満 越智学長はその理由について、どのようにお考えですか。越智 一つには経済的な問題があるのかもしれませんが、ある意味、満たされてしまっているところがあるのではないでしょうか。日本は貧しい国になったと言われますが、国内にいると海外と比較しないので、実感しづらいと思います。まあまあ快適だと思える環境にいることが大きいのかなと。志を抱きにくいのかもしれません。私もそれほど大きな志を抱いてきたというわけではありませんが、整形外科の領域で日本をリードしてきましたし、世界に胸を張れるという自負があります。文部科学省では学生への経済支援を重視していて、海外留学や博士課程後期学生への支援を充実させています。ただ「お金がなくても世界に出たい」という気持ちがあることが、まずは大切なのですが…。広島大学では、入学後に英語力を伸ばす仕組みが功を奏して、全学生の24%、医・歯・薬学部の学生では46%がTOEICスコア730以上です。経済面や教育面の環境を整えることも大切ですが、外向きのマインドをどのように育てるかが今後の課題ですね。中満 女性の方が外に出ていく意識が強いかもしれませんね。実は国連の日本人職員の70%は女性です。国内では女性が活躍する場がまだまだ限られているので、外に出て挑戦しようという気持ちが生まれやすいのかもしれません。越智 国際社会に出る女性が多いのは素晴らしいことですが、その動機が「国内で活躍できないから」ではいけませんね。真にジェンダーフリーな社会、男女共同参画社会を作っていくことも大切です。本日はありがとうございました。左:イラクにて多国籍軍の戦車の上で(1991年)、右:マグライ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)にてイギリス部隊と(1994年)ダルフール(スーダン)の国連PKOで女性警察官と一生を懸けるに値するテーマを見つけることが将来の道を拓くまずは「世界に出たい」という気持ちを持って

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