広島大学で何が学べるか2026
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07う。外務省は好意的に受け止めていると思いて書いていこうと思っています。さんは、アフリカ諸国が今後、世界で重要なめて「平和学長会議」を開催し、スウェーデンど、7カ国・地域10大学の学長と会合を持ちました。11月には「アフリカ・チャプター」と題して、アフリカ各国の有力大学の学長に参集いただきました。中満 それはすばらしい取り組みですね。越智 被爆地・広島に開学した広島大学には、特別な使命があるという認識が共有されているからこそ、遠いアフリカから本学へお越しいただけるのだろうと思っています。そして、今、イスラエルとガザ、ロシアとウクライナの紛争が続いています。ガザでは200人以上のもの国連職員が亡くなられています。こうした状況をどのように受け止めていらっしゃいますか。中満 率直に申し上げて、非常に苦しいです。私も国連に奉職して長いですが、このような状況は経験したことがありません。これほどの凄まじさで犠牲者が出ている、国際法違反が行われている。国連が発するメッセージは当初から明確ですし、アメリカも懸命に対応しようとしているのでしょうが、状況がまったく好転しないことに大変衝撃を受けています。また、アメリカはともかく、これまで人道や人権を強く主張していたヨーロッパ諸国が、ガザの人道危機に対して一致協力する立場を取れていない状況は、グローバル・サウス(アジア・アフリカ・中南米などの新興国や発展途上国の総称)諸国から見ると、完全なるダブルスタンダードでしょう。イスラエルとガザ、当事者同士の問題だけでなく、世界の構図が変わりかねない、グローバルに影響を及ぼすような事態です。そして、イランへも紛争が広がっています。これは怖いですね。越智 日本に何ができるのか、また一人の人間として何ができるのかを考えさせられますが、やはり国連が果たすべき役割は大きいと思います。飢餓状態に置かれている市民も非常に多いと聞きます。世界中が心を痛めていますが、何もできていないのが現状です。中満 現地に人道支援を入れるためには、停戦が必要ですが、いつ停戦合意ができるのかまったく不透明です。ここまでの事態になるとは、私たちも想定できませんでした。それほど大変な状況です。越智 ウクライナに関して、国連ではどのように考えているのでしょうか。中満 北朝鮮がウクライナに部隊派遣をしたという情報がありましたが、紛争をさらにエスカレートさせるような行動は非難されるべきであり、厳に慎むべきだと考えています。そして停戦と和平は、国際法の原則に基づいて行われなければならないと、グテーレス国連事務総長から直接、プーチン大統領に何度も伝えています。私もロシア外務省の幹部に会ってそういったことを話しました。紛争当事者との関係をしっかり維持して、言うべきことは直接伝えるということが、私たち国連の役割の一つです。越智 このような国際情勢を受けて、大学ができることはあるでしょうか。中満 たくさんあると思います。若い人たちが学問を通して対話できるオープンな場を提供し続けてほしいですし、研究を通じてさまざまな場面で貢献してほしいと願っています。本当に次から次へ課題が湧いてくるような時代ですので、学界には、新しい課題に対する研究と、研究を踏まえた上での提言をぜひお願いしたいと思います。実は私たちが研究者を探して、ピンポイントでリサーチをお願いすることもよくあるんですよ。越智 冒頭で中満さんからもお話がでましたが、広島大学は「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を外務省から受Ochi Mitsuo 東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。米国・ジョージタウン大学大学院修士課程修了(国際関係論)。国連 難 民 高 等 弁 務 官 事 務 所( U N H C R )、International IDEAなどでさまざまなポストを歴任後、一橋大学教授、国際連合平和維持(PKO)局政策・評価・訓練部上級部長、同局アジア・中東上級部長、国連開発計画(UNDP)危機対応局局長・国連事務次長補、難民・移民サミットのフォローアップに関する特別顧問代行を経て、2017年より国際連合事務次長・軍縮担当上級代表。1952年愛媛県生まれ。77年広島大学医学部卒業。95年島根医科大学教授。2002年広島大学大学院教授。広島大学病院長などを経て、15年広島大学長に就任。膝関節、スポーツ医学を専門とする整形外科医。開発を手掛けた軟骨の再生医療は、日本発として初の保険適用となった。15年紫綬褒章を受章。19〜21年文部科学省科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会委員、17〜22年日本学術会議会員、11〜17年および22年から日本学術会議連携会員、21〜23年文部科学省科学技術・学術審議会委員、文部科学省中央教育審議会委員。紛争長期化・拡大状況下でも当事者との関係維持が不可欠平和構築のために広島大学ができることNakamitsu Izumiら」ではなく、「どういう安保理が平和構築に効果的なのか」という視点で、改革に取り組んでほしいと思います。越智 日本政府の反応はどうでしたか?中満 この協定は合意されたばかりなので、政府では分析や考察をしている最中でしょますが、自民党総裁選や衆議院選挙を挟んだので、政治家の皆さんには、まだ詳細が伝わっていないのでは、という印象です。私が担当する新聞コラムでも、安保理改革につい越智 それはぜひ進めてほしいですね。中満位置を占めるというご見解ですが、私も同意見です。昨年(2023年)のG7広島サミットを踏まえて、今年(2024年)8月6日に、本学で初の世界海事大学、イタリアのパヴィア大学な越 智 光 夫中 満 泉 氏

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