15ズムを解明する薬理学に興味を持ち、薬学部に入学しました。薬学部で学ぶうちに遺伝子・ゲノムというキーワードに対する興味が大きくなり、DNAに結合するジンクフィンガータンパク質(ZF)の研究に取り組み、博士号を取得広く“ゲノム編集”として知られている遺伝子ます。コンクリートは、環境負荷が高いと考えられがちですが、実は環境にやさしい側面も多くあります。例えば、その主成分であるセメントの製造過程で廃棄物を受け入れたり、発リート材料として活用したりすることで、資などのメートル級のコンクリート構造物の表品としても認可を受けた例もここ数年で出てきました。現在はより正確に標的となる遺伝子を修復するゲノム編集技術(HDR向上技術)の開発に取り組んでいます。 研究の各分野で、その時代ごとに研究者が解決を夢見る課題というものがあります。ゲノム編集につながるアイデアの一つとして、1980〜90年代に研究が盛んであったDNAを切る抗がん剤があります。当時はDNA切断に低分子化合物を使っており、特定の箇所を切断するということは非常に困難でした。その中でDNA配列に特異的に結合するタンパク質が注目され、ZFの研究につながっていったのです。現在ではCRISPR-Cas(クリスパーキャス)という、ZFよりも簡便に扱えるタンパク質システムが発見され、ゲノム編集技術開発の中心となっています。クスリと聞いて思い浮かべるのは、錠剤や粉薬ではないでしょうか。それらは低分子の医薬品として医療を支えてきましたが、現在のがん治療、難治疾患治療では抗体関連技術が主流となっていますし、核酸医薬、mRNA医薬、細胞治療など、新しいクスリのカタチが続々と生み出されています。しかし、それらの根底には、世界中でボーダーレスに何十年にも渡って続けられてきた基礎研究の成果面は灰色一色で一塊に見えますが、断面をみるとmmからcmサイズの骨材(石や砂)が7〜8割を占めています。これらをμmサイズのセメントと水の反応で固めて一体化させることで、コンクリートはその高い強度を発揮しています。nmからmまで、幅広いスケールでの検討が求められます。 広島大学の構造材料工学研究室では、コンクリートを顕微鏡で微視的に観察したり、分析装置を用いて化学組成や鉱物組成を明らかにしたり、ナノスケールの細孔を測定したりと、ミクロな視点から材料の性質を評価しています。一方で、大型の鉄筋コンクリートはりに荷重をかける実験など、マクロな視点からの研究も行い、多角的なアプローチで材料や構造物の劣化予測や新材料の開発に取り組んでいます。実際に研究対象としている副産物のひとつに発電の過程で副次的に生産されるフライアッシュがあります。見た目はセメントと似た粉末ですが、微視的には球形で、鉱物組成や反応性も大きく異なります。こうした素材の特性を分析・評価し、コンクリートの品質を向上させる使用方法、すなわちアップサイクルの方法を探ることは、環境負荷を低減しながら、より安全で長寿命ながあるわけです。医薬品に関わる研究者は、これまでに夢見ても届かなかった治療技術に、一歩でも近づく研究成果が積み重ねられて研究分野全体の目標にたどり着き、それまでは想像もつかなかった技術へとつながっていく過程の主人公、目撃者となること、国籍に関係なくボーダーレスな協力関係や競争を経験できることが、大きな魅力ではないでしょうか。 医薬品の分野では、数年前では想像もできなかったmRNAの実用化などが驚く速さで展開されており、今後はさらに加速度的に開発が進められていくでしょう。そのような中、薬学という分野で学ぶべきことも、その役割も、大きく変わろうとしています。広島大学はゲノム編集の分野を牽引する大学として認知されており、そこから派生する技術革新への貢献も期待されています。意欲あふれる研究マインドを持った、学生の皆さんの参画を大いに期待しています。工学部大学院先進理工系科学研究科 准教授社会基盤を実現するために欠かせません。持続可能な社会の構築に向けて、環境にやさしいコンクリートの可能性を学び、広げていくことができます。私たちの生活を支えるコンクリート 3セメントと火力発電の副産物であり、セメントに一部置換して活用できるフライアッシュ細胞周期のうちS/G2期で起こる正確なゲノム編集(Homology-directed repair: HDR)を制御する方法薬学部大学院医系科学研究科 教授オロジー 私は、ヒトの体の中で薬が作用するメカニ後に米国スクリプス研究所でDNA結合タンパク質を使って、病気の原因となっている遺伝子の治療を行う研究を行いました。現在は治療技術で、いくつかの遺伝病に対する医薬 当たり前のように存在するインフラに不可欠な材料、コンクリートについて研究してい電や製鉄の過程で生じる副産物をコンク源循環に貢献しています。廃棄物や副産物を新たな建設材料へとアップサイクルする取組みが古くから行われ続けているのです。 これらの材料を実際に使用するためには、強度や構造物の耐久性にどのような影響を与えるのかを評価する必要があります。橋梁特集小川 由布子●専門研究分野/土木材料学、コンクリート工学野村 渉●専門研究分野/ゲノム編集、ケミカルバイResearchers広大新しいクスリのカタチへの挑戦環境にやさしいコンクリートを探究し、人々の生活を支える。
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