広島大学で何が学べるか2026
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教育の特色キャンパスライフ学部・大学院教員・入試・オープンキャンパス・説明会・アクセス広島大学について1 4も2023年度から多職種で脳卒中・心臓病センター事業を開始し、脳卒中・心臓病の包括的な医療支援体制を構築するために、リーダーシップをとり、さまざまな活動を行っています。 心房細動は最も頻度が高い不整脈ですが、加齢とともに増加するので日本の高齢化に伴い、有病率も急速に増加しています。脳卒中や心不全や認知症の原因となり、著しくQOLを下げ健康寿命の短縮の大きな要因となっています。我々は心房細動のトータルマネジメントに力を入れています。早期発見については、先進的な機器を用いた早期発見システムの構築や、心房細動原因遺伝子と臨床データを組み合わせた心房細動発症予測モデルの構築などの研究を行っています。心房細動患者さんの中で心不全を発症する人を予測する遺伝子についても発見しており、早期にハイリスク患者さんを選別することができるようになりました。心房細動のカテーテルアブレーション治療のテクノロジーは急速に進歩しており、早期発見早期治療介入することで、心房細動によるさまざまな弊害を予防することができるようになりました。心房細動の新しい治療方法の開発や、治療後の再発に関連する遺伝子の発見、また歯周病が再発要因となることも発見しており、心房盤は未解明であり、その病態解明や治療、創薬には、臨床研究に加えて動物を用いた研究が必要不可欠になります。しかし、どのようにして動物の“こころ”を診るのでしょうか。 少し専門的な言葉になりますが、「行動薬理学」という学問領域があります。端的に言うと、動物の行動から脳の機能を探り、また動物の行動に対する薬物の作用を研究する学問です。行動薬理学は実験心理学と薬理学の融合領域であり、心理学の方法や概念を使って薬障害(躁うつ病を物が精神に及ぼす影響を研究します。基礎研含む)の国内総患究ではマウスやラットといったネズミ(げっ歯者数は172.1万人類)を用いることが多くありますが、私は、動物と報告されていまの行動特性が脳の中のどのような神経回路やす。うつ病は、抑う細胞によって規定されているか、また環境変つ気分、興味また化やストレスによりそれらがどうなるのかを、行動薬理学的手法とさまざまな生命工学技術、脳活動計測法を組み合わせて明らかにしし、さらに睡眠障ようとしています。さらに最近では、AIや分子害や思考・集中力動力学シミュレーション、ドラッグ・デリバの減退、自殺念慮リー・システムの技術を使って、脳に効率よくまたは自殺 企 図移行するペプチドナノ製剤の開発にも取り組んでいます。があります。うつ 広島大学発、そして世界初の精神疾患治療病の生物学的基薬の実現に、一緒にチャレンジしてみませんか。細動の治療成績向上に貢献しています。 一方で、若年や青壮年期に心臓突然死を起こす致死的不整脈の研究も行っています。普段は全く症状がなく、元気に過ごしている人を突然失う家族の悲しみは計り知れないものがあります。我々は青壮年期で心臓突然死を起こすブルガダ症候群の遺伝子や、臨床的な因子を利用して、突然死を起こす可能性があるハイリスク症例を選別する研究を長く行ってきました。これらの病気も早期発見と薬やデバイスを用いて治療介入することで、突然死を予防することができます。 実際に患者さんを診る中で問題となる点について研究し、日常臨床に還元するfrom bench to bedsideというスタイルを取っているため、患者さんを治して健康を維持していただくという目的に直結しており高いモチベーションで研究が継続できます。歯学部大学院医系科学研究科 教授分子動力学シミュレーションによる標的タンパク質と候補物質の複合体モデル脳卒中・心臓病センターの市民公開講座で心電図・血圧測定体験を開催血中から脳組織に候補物質を移行させるドラッグ・デリバリー・システムの開発医学部大学院医系科学研究科 教授 日本の高齢化はどんどん進んでおり、高齢者率は、2024年で29.3%、2070年には39%まで上昇すると予測されています。平均寿命と心身ともに自立して健康的に生活できる健康寿命には大きな格差があり、いかにして健康寿命を延伸するかは大きな課題です。2018年に健康寿命の延伸を図るための脳卒中心臓病対策基本法が制定され、各都道府県で循環器病対策推進計画を策定遂行していますが、2022年からは、そのハブとなる組織として、脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業が厚生労働省で立案されました。広島大学で 我が国は超高齢社会に突入し、COVID-19の世界的流行などを要因とした生活環境の変化も著しい現代社会において、メンタルヘルスへの影響が懸念されています。2021年5月に公表された経済協力開発機構の国際調査によると、日本国内のうつ病・うつ状態の人の割合は、コロナ禍前の7.9%(2013年調査)に対し、2020年では17.3%と2倍強に増加しています。厚生労働省が発表している最新の患者調査について見ると、2020年の気分[感情]は 喜び の 著しい喪 失を主 症 状とが 見られる場 合中野 由紀子●専門研究分野/不整脈吾郷 由希夫●専門研究分野/中枢神経系薬理学健康寿命の延伸のために ~from bench to bedside~健康寿命の延伸のために ~from bench to bedside~脳脳機能の解明から、精神疾患の次世代創薬を目指す。

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