●●●●●●●●●●●●●●附置研究所原爆放射線医科学研究所ゲノム科学などの最先端の基礎研究から、再生医療など高度な臨床展開に至るまで「放射線の人体影響」の総合的な研究を推進しています。被爆者の医療を半世紀にわたって行う一方、放射線災害・医科学領域の研究拠点として、全国の研究者・医師と活発な共同研究を進めています。13さんは、「視る」という機能を持って生まれ、「視る」ことは当たり前だと思って、成長された方が大半だと思います。「視る」機能が土台にあって、知識や経験が加わり「見る」ことが、さらに疑問を持ち、その疑問を解決するために研究をすることで「観る」こととなります。また、私たち医師は、目の前の患者さんの困り事を解決できるように一生懸命にトレーニングをすることで「診る」「看る」ことができるようになります。 土台となる「視る」機能が、無くなってしまうこと(=視覚障害・失明)を想像したことはありますか。実は、加齢、性別、年収、環境、遺伝などさまざまな影響によって、世界では4人に1人が視覚障害者です。先人たちの弛まぬ努力による医学の発展により、そのうちの半分以上は治療することによって元通りよく視えるようになります。しかし、私が研究している緑内障や糖尿病網膜症といった眼底の病気は、進行を抑える学術・社会連携室オープンイノベーション本部産学連携部バイオデザイン部門/眼科特任学術研究員/特命准教授治療法はあるものの、残念ながら、元通りにする治療法はまだありません。ただ、進行する前の早期の段階で治療を開始すれば、より進行を遅らせることができ、失明に至らないことが知られています。 それでは、どうやって早期の段階で治療を開始すればいいのでしょうか。咳と喉の痛みと発熱で病院に行ったら、医師から喉を見られ胸の音を聴かれて、場合によっては長い綿棒を鼻から入れてグリグリするインフルエンザ(と最近ではCOVID-19もでしょうか)の検査をされると思います。治療の前には、診察と検査が必要です。 広島県は山間部や島嶼部といった自然に恵まれた環境である一方で、実は日本で二番目に無医地区が多く(一番は北海道)、患者さんが気軽に眼科に行きにくい現状があります。そのため、特に「眼科医による診察と検査」に辿り着くことが難しく、末期の状態になって初めて眼科受診される患者さんを多く経験してきました。早期の段階で眼科を受診していただくためには、どうしたらいいかと考えたのが、今の低価格なスマートフォン接続型眼底カメラ(スマホ眼底カメラ)とAIを活用した遠隔眼科診療システムの研究開発でした。眼科に辿り着くのが難しいのであれば、眼科以外の場所で気軽に検査と診断ができればいいのではないか、というとて専門研究分野眼科、糖尿病代謝内科、深層学習もシンプルな発想です。 低価格なスマホ眼底カメラ、AIによる診断支援プログラム、遠隔眼科診療システムの開発も、実際には私一人では不可能です。それぞれの分野の第一人者である研究者の先生方や複数の事業会社と共同で研究開発を行っています。広島大学が総合大学であること、また学部同士の垣根が低いことが後押しとなり、医学部や病院の各診療科はもちろんのこと工学部の先生方とチームを組むことで研究開発を進めることができています。 今は、チームで開発した研究成果を一刻も早く社会実装すること、そして持続可能な形で日本だけでなく世界に大きく展開させることを目指してスタートアップの設立準備も行っています。世界中の患者さんが「明るい」生涯を送れるような将来を作っていくことが私たちの目標です。開発中のスマホ眼底カメラ。研究室で開発しただけでは量産化に対応できないため、国内メーカーと共同で、社会実装に向けてさらなる改良が必要となる。「広島大学ものづくりプラザ」に依頼し、3Dプリンターを用いて試作機を製作自分たちの「眼」を使ってスマホ眼底カメラの実験を行っている。半導体産業技術研究所高等教育研究開発センター情報メディア教育研究センター自然科学研究支援開発センター森戸国際高等教育学院保健管理センター平和センター環境安全センター総合博物館宇宙科学センター外国語教育研究センター文書館スポーツセンターHiSIM※研究センター学内共同教育研究施設MIZUNO YU水野 優第一線の研究を支える、 低価格な眼底カメラの開発で、治療可能な失明を防ぐ。皆
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