広島大学案内2023-2024概要版
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●11教育学部大学院人間社会科学研究科 講師※2023年2月28日現在の研究を簡単に表現すると、「学校や社会での大人の関わり(教育)が、どのように子どもたちの心理・社会的成長を促すか」ということです。 現代の子どもたちを取り巻く状況には、不登校やいじめ、校内暴力、子どもの貧困、虐待、ヤングケアラーなど、さまざまな困難が生じています。現代社会は変化が激しく、また、人と人との関わりが希薄化していますが、子どもが心理的に安定し、適切に社会性を発達させていくためには、周囲の人々との関係が豊かであることが必要です。私は特に学校現場において、教員やスクールカウンセラーなどの職員が児童生徒をどのように理解して関わればよいか、子ども同士や周りの大人とのどのような関わりが、子どもの心理にどのように影響するか、などを研究しています。 私の研究のスタートは友人関係の発達、しかも、深刻ないじめや対人トラブルの生じやすい思春期の女子の友人関係の背景に関するものでした。そこから子どもたちの対人関係や社会性の発達について興味を持ち、現在に至ります。対人関係のベースは乳幼児期に築かれる愛着の適切な発達にありますが、残念ながらさまざまな環境の影響で、愛着形成の重要な時期に適切に愛着関係を経験できない子どもや、養育者との関係の悪化による影響を受ける子どももおり、それらが子どものストレス、そしてそこに起因する問題行動・状況などへつながります。学校や国内外での児童福祉施設での実践や研究を通して、子どもたちの心を理解し受容的に関わるだけでなく、人とのつながりを持つスキルを教え、活用できるように教育活動を組むことで、こうした困難から子どもたちを救える可能性があることがわかってきました。これらの知見は、広島県内外の教育行政や学校現場で生かしていただいています。 2022年度に東広島市と連携したヤングケアラー研究では、自分の困り感を周囲にわかってもらいにくい状況が、その人の将来への希望や、自分らしさという感覚を損なっている可能性があること、そして、教育や福祉の現場にいる大人は、子どもたちの悩みに寄り添いたいけれど、どのように寄り添えばいいのか困っていることが明らかになりました。こうした結果を受けて、2023年度は実際に支援する取組を東広島市と共同で始めています。 このように社会的に課題になっていることについて、どのようにアプローチできるのかを探れることは、自分にとってもやりがいが大きいものです。つながりの力で子どもたちを育て、教育を通じて子どもたちの明るい未来をサポートすることを目指しています。私は、教育はいつの時代も社会を変える力になると思っていて、子どもたちがより良い社会人となる力を育てることが、何よりの社会貢献だと考えています。そして教育に関わるのは、教育者や研究者だけではありません。地域の方々も教育を支える大きな力。本学の研究と地域の連携を今後も広げていきたいと思っています。映画『となりのトトロ』の登場人物・草壁サツキは、ヤングケアラーか?―母親が入院中の草壁家では、小学生のサツキが家事や妹の世話を一手に引き受けている。山崎講師は「学校の先生や隣家の人々の理解や支援を得ているサツキは、ヤングケアラーの定義に当てはまる部分はあるが、ヤングケアラーとは言いきれない。子どもがケアにより大きな心理的負荷を受けない環境であることが重要」と語る。教育現場、福祉現場の教職員への研修を通じて、子ども支援の向上に貢献している。先進的な教育相談・生徒指導が展開される国々へ海外視察。研究者・実践者の交流を行っている。学校や児童福祉施設などで、子どもへの直接的な支援・間接的な支援に携わっている。インキュベーション研究拠点YAMASAKI AKANE専門研究分野学校心理学、教育相談・生徒指導、スクールカウンセリング自立した世界的研究拠点へと成長する可能性のある研究拠点を選出し、重点支援を行います。●●●ポリオキソメタレート科学国際研究拠点オルガネラ疾患研究拠点都市―農村流域圏の健全循環創成(SATO NET創成)MBR拠点アジアにおける都市−農村の健康循環のための新たな学術研究分野の創成〈都市−農村流域圏の健全循環創成(SATO NET創成)〉都市­農村流域圏の健全循環創成拠点は、都市化の進むアジアにおける都市とその周辺との健全な循環(人、食糧を含む)の創成を目標としています。里山・里海は、人間が積極的に手を入れることで自然資源をより活性化させ持続的に活用する発展的な共生であり、日本における独自性の高い環境創成システムです。本拠点の取組は、瀬戸内海流域での成功事例をもとに、アジア諸国での課題解決に資する新たな学術研究分野の創成を目指すものであり、SDGsにも貢献するものです。山崎 茜私教育を通じて子どもたちの明るい未来をサポートする。世界トップレベルの研究拠点の創出へ

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